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川は名医

三木成夫の本が図書館にないかと
探していると、
日本の名随筆別巻89生命
に収録されているらしいので
さっそく借りに行くと
目次に南木佳士の名前も。

南木佳士というと、
「ダイヤモンドダスト」で芥川賞を
受賞した作家。

もともとお医者さんで、
「長男の誕生や、患者さんの死、
人間の出発と臨終の後継を交代に
見せつけられて生活を続けるうちに、
思考が停止してしまった。」
のだそうな。

ノイローゼって今はほとんど
使わないけど、
今で言うパニック障害になって
病院を辞職された、という方らしい。

ぼくは「急な青空」というエッセイ集を
読んで(詳細は忘れちゃったけど)
川底に沈んだ石がちらちら光っている
そんなイメージを抱きました。

落ち込んだ気分を、
ゆるやかに快方に向かわせてくれる
という印象が。

で、図書館で見つけた随筆集に
南木佳士さんの「泡のような命」という
一篇を見つけて、読んでみました。

エッセイの中で南木さんは
「病院の中にこれ以上居続けると
発狂しそうな気がして、
裏を流れる川の岸に出てみた」と。

正常な精神の人には、
きっと無意味に思えるだろうけれど
川をじっくり眺めていると
いろんなものが目に入ってくるそうです。

浅瀬を泳ぐ生まれたばかりのハヤ。
たった一年という短い一生を
完全燃焼しつくそうとしているかのような
アユの群。

それをみて、
「あいつらとおなじなんだ」
と南木さんは思ったそうです。

続けて、
(かいつまんで以下引用)

誕生が山の湧水なら、
川が人生で、死とは海。

人間は川の流れに乗った
考える藻にすぎない。

どんなに考えたところで、
川は海に向かって流れていく。
それならば、
まず流されている自分を
自覚するところから、
考えることを始めればいい。

川は、生きることに疲れている
「フリ」をしていた私に、
貴重な忠告をしてくれた。

川はノイローゼ気味になっていた
私を治してくれた名医、だと。

続きは、あした。

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