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実学ってなんだ

詩人の荒川洋二のエッセイ
忘れられる過去」(みすず書房)の
142ページに、
「文学は実学である」という
タイトルがある。

その影響なのか、
本が出てしばらくして
電車の中で大学の広告に
「実学」という文字を、
見かけるようになった。

小中高校のとき、数学や、古文、
その他にもいろいろ、
これって、なんのために
勉強しているんだろうって、
誰しもが思ったんじゃないか。

実生活とは、ちょっと離れたところで、
なにやらやっているけど、
果たしてこの目的とはいかに。

そこで、「実学」の登場だ。
これは、実際の社会に役に立つ、
というのが、学校の宣伝として
いい売り文句になる。

ちょっと話がそれます。
「少子化問題」って言われるけど、
あれはちょっと納得がいかない。

少子化問題で困っているのは、
年金を払う人口が減るとか、
教育産業が衰退するとか、
絵本が買われなるとか。

まだ、ぼくの知らない理由が
あるんだろうけど、
短絡的に上記のようなことを
聞くと、あれ?と思う。

要するに、これからの人たちを
結局金づるでしか、考えてないんじゃ
ないかな。と思えてしまう。

仕事で成功する、みたいなことも
結果お金になることであって、
お金になるっていうことが、
どういうことになるんだろう?
と実はあんまり考えて
いなかったことに気が付く。

結果ついてくるものなのかも
しれないけど、
今の経済活動をする上で、
実学というからには、
どうしてもお金に絡めたくなる。

でもそうすると、実学の意味が
変わってきてしまうようにも思える。

荒川洋二の言う実学って、
自分がどう生きるか、
どういう見方で現実をとらえるか、
みたいな、モノとしての価値では
測りにくいこと。

生き抜く力みたいな。

…生き抜く力、というと、
じゃあ、学校の科目に
「サバイバルの暮らし科」と
「自信をもとう自己啓発科」を
増やせばいい。けどなんか違うな。

いま、自分で自分たちの状況って
はっきり言ってよくわからない。

高畑勲「アニメーション、折りにふれて
(岩波書店)の、
「8、伝えたい、このこと」を
読むと、うーん、今の時代は、
大変なんだ、とぞくっとする。

ぞくっとするけど、
本から顔をあげて、日常生活に
戻ってしばらくすると、
どうしようもなさに、
その感覚は消えてしまう。

実感がわかない。
いま、ぼく自身のすることが
自分にとって、他の人にとって、
どう実学に結びつくのか。

うーん。

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