土は汚くない…
フランスはプロヴァンスを舞台にした
「マルセルの夏~プロヴァンス物語~」
(1990年)
という映画がある。
時代は19世紀末、
夏休みを家族そろって田舎で過ごす、
なんていう、ありきたりな物語なんだけど、
こまごました描写が好きで、
たまに観かえしたくなる。
どんなのが好きかというと、
たとえば、こんなの。
10才くらいのマルセル少年が、
田舎の道端でドレスを着た少女と出会う。
話してみると、私は貴族の娘で、
迷子になったから案内しろ、という。
心優しきマルセル少年は、
その道々、土の根をわけて、
すっぱくておいしい実を
とって彼女に食べてごらんといった。
しかし女の子の反応は、
「汚い」であった。
マルセル少年は手早く
ズボンで手を払ってみたが、
こういった。
「これは土だから、汚くない、
平気だよ。」
このシーンをみたときに、
あ、土って汚いんじゃないんだと
はっとした気分になった。
だいたい野菜やお米、
それからきれない花も植物も水も
思えば土があるからできるしなあ。
大してよく知らないけど、
大げさな言い方をすれば、土は
生物を支える、まさに縁の下の力持ち、
なんじゃないか、という気持ちが
頭をもたげてくる。
*
逆にどうして、土が汚いのだろう、
とも思うようになったが、
そもそも、汚いっていう基準はなんだ、
ってことになるんだけれど。
衛生的に、と考えてみれば、
「本来は」土はきれいなはずなんだ。
一方で、服に泥がつくとか、
顔が土埃で黒くなる、という
染みとか、くすみ、という意味での
よごれ、としては
汚いのかもしれないけど。
*
植木鉢から、いかにも
おろしたて、というような芽が
ぽっとでているのをみると、
ふしぎな気持ちになる。
外をはだしで歩く文化を
持っている人々がいるけど、
あれは、はだしで歩けるだけの
土のきれいさがあるからなんだろう。
日本でそれをやったら、土以外のもので
足の裏が切れちゃって
まともに歩けなそうだ。
分かんないけど、そんな気がする。
土離れをしてるなあ。
なかなか腰をあげられないし、
よく知りもしないで言うけれど
土に触るような生活をもう少し
知ってみたい。
2017/06/08