世界中が味方
フランスの映画、
「ロングエンゲージメント」を見てると
主人公のマチルドに
たびたび共感をおぼえる。
それは決まって、
お願い事をジンクスに託す、
というシーン。
第一次世界大戦中に、
戦争に赴いた婚約者(マネク)が
無事に帰ってくるように、
マチルドは何度もこころみる。
出征の日、
車に乗り込んだマネクを見送った後、
マチルドは先回りをして走り出す。
「車より先にカーブに辿り着けば
マネクは無事に帰ってくる。
先にカーブに辿り着けば…」
と繰り返しながら。
日が暮れかかる部屋で、
ベッドの上でこう考える。
「夕食前に飼い犬が部屋にくれば、
彼は無事に帰ってくる。」
*
列車の個室にゆられながら、
「7数えるあいだに、
トンネルに入るか、車掌が
入ってくれば、彼は無事。」
*
結果どうなったか、
これは演出として素晴らしい。
カーブに辿り着いた時、
車はやってきたが違う車だった。
「夕食だよ」という声と同時に
犬が部屋に入ってきた。
6つ数えた時に
「キップを拝見」と入ってきたが、
それは車掌ではなく、
エイプリルフールで悪戯に来た
知らないお客さん。
*
まだ希望があるような、
けれど、まだ決まったわけではない。
…観るものをどきどきさせる。
勝手にルールを決めて、
それに沿えばすべてうまく行く。
ということは自分でも
よくやってしまう。
これは直に解決に
結びつく行動ではないから
一見、無為に思える。
じゃあ、なんでそんなことを
するのかしら、と考えてみる。
いつでも希望を絶やさないため、
なんだろうなと思う。
世界のすべてが
自分の味方について動き出す、
という錯覚が
自らを突き動かす原動力に
なるのだと思う。
2013/03/12