ロックウェルの真似
スタジオジブリで「耳をすませば」の
監督をした近藤喜文が好きで、
「ふとふり返ると」(徳間書店)
をたまに見るんだけど、
そこに、好きな作家として
林明子、ロックウェル、鏑木清方を挙げている。
市井の様子、
些細なドラマを描くのが共通点。
近藤喜文のスケッチを見ると、
林明子に似た雰囲気を感じたので、
それはとてもよくわかるのだけど、
ロックウェルって、
あのリアルな絵を描く人だよな。
鏑木清方に関しては
「鏑木」って何て読むの?レベル。
そこで、図書館でロックウェルと、
鏑(かぶら)木清方の画集を
借りてきた。
そもそも、
「表情を活き活きと描くための参考」
という目的があったので、
ちょっと真似して描いてみよう、と。
*
ロックウェルの画集を見ていると
写真のようにリアルな絵なのに、
よーく見ると、
かなりデフォルメされている。
その様子がおもしろくて、
ときどきくすっと笑ってしまう。
美人の高校生のチアリーダー3人が、
間抜け顔で座っている絵とか、
学校のプロム(舞踏会)に行くのに、
ドレスを鏡の前であてがっている
ボーイッシュなスタイルの女の子、
表情を見ると怪訝な顔をしている。
「これ、ほんとにあたしが着るの?」
と言っている声が聞こえてきそう。
(前回書いたアニメ「日常」
「あそびあそばせ」とかにも通ずる
コメディの匂いがする)
それで、一番面白かったのが、
上の絵の、
ずってんころりんしたらしい女の子。
なぜか満面の笑み。
このミスマッチさが、
笑えてくるんだけど、
この独特な表情はどこから来るんだろう?
*
ぱっと見ると分かりにくいけど、
真似して描いてみると、よくわかる。
髪の乱れ方、リボンがゆるゆると
垂れている様子、
胸のボタンが外れてだらしない首元、
たるんだ靴下、はみ出したシャツ。
にも関わらず、
腕をふんばるように、椅子をぎゅっと
掴んでいる。
外見だけみると、かなりダメージを
負っているんだけど、
心は全然元気だよ!という声が
聞こえてくる。
表情だけでなく、
腕の力の入れ方が一役買っている。
*
…絵ひとつから、こんなドラマというか、
物語が読み取れることに、
目からうろこ。すごく面白い!
絵はただ見ているだけだと、
スルーしちゃうけど、
真似して描いてみると、
思わぬ発見があるなあ。
2019/10/19