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パジャマを着たら、どこいこう

絵本を作るというのは、
一見自由なことのように思えて
そうでもない。

たとえるなら、
自分の部屋でひとり
言いたいことを言う分には
なにをいってもかまわないけど、

子どもたちや、親御さんが
ズラーっと並んでいる前で、
同じように好きなことが言えるか、
というと、そうでもない。

勇気や思いが足りないからだ、
と思われるかもしれませんが、
そういうことでもなく。

仮に汚いことばとか、
スラング的なことばを
意図せず使ったときなど、

「それはうちの子には
覚えてほしくない」
「私が読み聞かせするには
ちょっと…」

という意見が少なくない。

それが、本の物語にとって
必然でなければ、
外せばいいんだけど、
物語の要の「キーワード」として
使っていた場合。

易々と外すわけにはいかない。
ジェンガの「重心が一番
かかっているピース」を
抜いてしまうようなもの。

なので、その「配慮」について
一考した措置をとらざるをえない。
だいたいそういうことを経ると
自動的に本はつまらなくなる。

そこをなんとか、面白く保てないか
と粘るのが楽しいといえば
楽しいのだけど、
苦しめられる要因でもある。

まあ、そんな悩みがあって、
おかべりか「よい子への道」を
手に取ってみると、
ああ、これは!と思う。

てっきり、よい子になるためには、
こういうことをしなさい、
という本かと思ったら、真逆だった。

「よい子への道 その3」
「お客さまがきたときにしては
いけないもの」
1、みんなでにおいをかぐ
2、おばあさんにばけてお茶をもっていく
3、手品をする
4、こわい話をする

こんなふうに、
よい子になるためには、
~を「してはいけない」逆説で
よい子を語る。

そして、挿絵が本当に
ユーモアたっぷりでおもしろい。

これはだから、ほとんど、
悪い子への道でもあるんだけど、
「してはいけない」の
マジックワードのおかげで
どんな悪い事でも、
「よい子への道」にしてしまう。

「だって、これはしちゃいけないこと
だからさ、いいんだよ」
という理屈が仕立てあげられる。

「おしりのこと、
ケツっていったら、いけないんだよ」
といいながら、「ケツ」を連呼する
みたいなこと。

法の抜け道をくぐりぬけた
みたいな快さがある。
ずるがしこいがいやらしさがない。

なかでも一番ぐっときたのは
「よい子への道 その14」

「パジャマにきがえてから
してはいけないこと」
1、新体操をする
2、やねにのぼってギターをひく
3、パックをしてよふかしをする
4、友だちのうちへあそびにいく

絵がないと面白さが、半減だけど、
パジャマを着たら、もう外へは
出ない、というのが常識だけど、
パジャマを着て、グローブと
バット、ボールを持って、
暗い夜道を集団で駆けていって
「野球やろうぜ」と
友だちの家に声をかけて回る。

その背徳感の裏側にある快感に
思わずぞくっとして、しまった。
うわー、あの感覚って楽しいよなあ。

夜中パジャマを着てから、
自分だったら、
何がしたいかなあ。

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