トリツカレ
本を読む時も、
テレビを見る時も
車を運転するときも、
どこかで、ぼんやーりしてしまう。
ジブリの特集がやっていたので、
これまたぼんやーり見ていると
宮崎駿が
「アニメーションは現実を
うつしとるものだ」
と言っていた。
身の回りには、
無意識に取り込まれてくる情報が
たくさんあって、
それらをくまなく再現していく事で
リアリティが生まれるのだ、
というようなことを言っていた。
*
完成したアニメ見れば、
描かれているニュアンスが分かるけど、
実際にそれを描け、と言われたら
絶対に出来ないと思う。
そこで起きている現象のことを
ぼくは全然理解できていないから、
描きようもない。
当たり前すぎて気にかけていない
ような現象も、
アニメーションを描く人たちは、
しっかり観察して
把握しているんだろう。
「見なければ」という本能的な
衝動によって、まなざしは
何かに取り憑かれたように鋭くなる。
*
数学者のドキュメントの本を
読んでも同じような事が言われている。
とにかく散歩が好きで、
見るもの見るものが、すべて自分の
考えている事柄に結びつけてしまうのだ
という。
「勉強している」時間ではない
時にでも、考えは続いている。
こういう話を聞いた後、
自分を省みると恐ろしくなる。
あまりに空白の時間を
過ごしすぎているような気がしてくる。
なにに対しても興味を持って
熱を上げる人がいるけれど、
自分には何もないのではないか、
と恐くなる。
同時に、そういう人を
仰ぎみるようになる。
そうそう、いしいしんじの
「トリツカレ男」を読んだ時は、
感嘆の声をあげたものでした。
2012/08/20