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ノンストイック

気がつくと、髪が伸びている。
 
前髪を指でくるくるさせながら、
なんだか感心してしまう。
 
髪って「伸びる」のをサボったりしないで
えらいんだなあ、と思う。
 
他にも、
たとえば体だって、怪我の傷口を
治癒しようと休まず働いてくれるし、
逆に虫歯なんかもじわじわ進行してくる。
もっと大袈裟なことを言えば、
大陸でさえ、マントル対流によって
日々動きつづけているのだ。
 
ああ、そうなんだ。
じぶんが眠っている時にだって
周りでは(自らの体内でさえ!)
いろんなことがぐんぐんと進んでいく。
 

 
「たった今もミュータンス菌は
実直に穴ほりに勤しんでいるっていうのに、
どうしてじぶんは、怠けたら怠けた分だけ
怠けてしまうんだろう。」
 
と思う。
 
髪の毛だって、たとえば
髪の毛の同胞と打ち合わせて
本日を休日とするべし、とか言って
その日だけ休むなんてことはない。
 
無茶苦茶にストイック。
あこがれる。口惜しいくらい。
 

 
寄り目の回数が、
ある一定基準を越えると
「戻らなくなる」ということや、
 
しゃっくりをしすぎると
ベロが痙攣して、
「呼吸ができなくなる」などという
恐ろしい都市伝説があるように、
 
怠け度が水準を越えると
「風呂に入らなくても平気」になり、
「いつ見ても寝起きにしかみえない」
を経て、やがては
「眠りから覚めない」になってしまう。
 
ぐすん、
そんな恐ろしいことってない。
 

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