ノンストイック
気がつくと、髪が伸びている。
前髪を指でくるくるさせながら、
なんだか感心してしまう。
髪って「伸びる」のをサボったりしないで
えらいんだなあ、と思う。
他にも、
たとえば体だって、怪我の傷口を
治癒しようと休まず働いてくれるし、
逆に虫歯なんかもじわじわ進行してくる。
もっと大袈裟なことを言えば、
大陸でさえ、マントル対流によって
日々動きつづけているのだ。
ああ、そうなんだ。
じぶんが眠っている時にだって
周りでは(自らの体内でさえ!)
いろんなことがぐんぐんと進んでいく。
「たった今もミュータンス菌は
実直に穴ほりに勤しんでいるっていうのに、
どうしてじぶんは、怠けたら怠けた分だけ
怠けてしまうんだろう。」
と思う。
髪の毛だって、たとえば
髪の毛の同胞と打ち合わせて
本日を休日とするべし、とか言って
その日だけ休むなんてことはない。
無茶苦茶にストイック。
あこがれる。口惜しいくらい。
*
寄り目の回数が、
ある一定基準を越えると
「戻らなくなる」ということや、
しゃっくりをしすぎると
ベロが痙攣して、
「呼吸ができなくなる」などという
恐ろしい都市伝説があるように、
怠け度が水準を越えると
「風呂に入らなくても平気」になり、
「いつ見ても寝起きにしかみえない」
を経て、やがては
「眠りから覚めない」になってしまう。
ぐすん、
そんな恐ろしいことってない。
2012/09/02