エアポケットにて
高校生の春、
健康診断のお医者さんに
はい
息吸ってー。
と言われて、
ちゃんと吸えなかったことがある。
*
それは体調が悪かったから、
ということでなく、
心も体も健康状態なのに
なぜか身動きが取れなかった。
これを分かり易い例えで言うと、
テレビを見ているとき。
画面の向こう側でアナウンサーが
「おはようございます」
と言っても、
特にこちらが反応を返す必要はない。
別次元での出来事なのだから。
自分は、
そこに関与することがない、
無関係な「目」にすぎない、という感覚。
このように、お医者さんと
対面しているのにも関わらず、
ふわふわと、傍観者というつもりで
座っているので、
「息吸ってー」と言われても、
本当にじぶんに言われたことか
実感が湧かなかったのである。
*
なんだか現代っ子を象徴するようだ
とか、
成長の仕方を失敗してきてしまった
ということを自分でも思うけれど、
実のところ、そういう体質?を
どこかで楽しんでいるような自分もいる。
最近でも、
やることが積み重なっているのに、
ふと眠ってしまい、
大変な時間になっているようなことがある。
現実から、自分がまったく切り離された
場所に来ているような感覚、
そこから、
スカイダイビングさながらに
現実へ急降下するようなもの。
「自分がやらなければ、
永遠にものごとは進展しない」
という事実に、
はげしい恐怖心を覚えながらも、
非効率的なエアポケットで
(現実とはまったく別の次元)で
なにか大事なものを
育んでいるような気もする。
うーん。
気がするだけかもしれないですが。
2013/02/16