インドアのアウトドア
小平に「ふるさと村」という
江戸時代中期の旧家などが建っている
ちいさな公園がある。
そこだけ時代が違うようで、
朗らかな気分になれるのがいい。
近くを通ると、
アニメによくあるシーンが
思い浮かんでしまう。
“ご馳走の湯気”が手招きしながら
鼻を釣りあげて誘うのと同じように、
ぼくもまた「ふるさと村」に
ふらふら寄り道してしまうのだった。
*
江戸時代の住宅というのは
筒抜けで気持ちよいが、
冬は寒そうだなと思う。
家財道具や生活用品が明らかに
少なく、生活感はあまり
感じられないけれど、
当時もこんなに筒抜けにして
暮らしていたんだろうか。
ただ、その筒抜けのおかげで
外からでも、火がちらちら見えた。
あ、さては囲炉裏だな!?
わくわくして中に入ると
幸い誰もいないので、
囲炉裏の横に腰かけて炎を眺めた。
火はいいなあ。
思いかえせば直の火を目にするのは
ガスコンロくらいで、
こういう天然の火は年に数回程度。
あっというまに
安らかな気分になれる。
そこへ小学校くらいの
女の子が裸足で走ってきて
囲炉裏の火をじいっと見つめる。
ちょっと危ないんじゃないの、
ってくらい顔を近づけてから、
「あちい、これ!」
と満面に笑いながら
さーっと外に出て行ってしまった。
*
煙の匂いはキャンプを
思い起こして懐かしくなるけれど、
家の中でこれは結構きつくないか。
と上を見ると天井は案の定、
煤だらけでまっ黒。
部屋と部屋は上の方では
繋がっており、
そのまま外へ煙が抜けていく
仕組みになっているようだった。
こりゃあ、
ますます寒いだろうな。
インドアでアウトドアなんだなあ。
2013/04/09