はい、わらわせてー
電車に乗っていると、
たまにスマホを片手にひとりで
にやけている人をみる。
ぼくはそんな人に、寛容である。
なぜなら、自分も同じ体験を
しているから。
理由はくだらない。
ふと、つまらない冗談を思い出して、
または、
冗談を繰り出すyoutubeをみて。
頬のあたりに、
にやけのさざ波がたち、
突如、顔の内側が噴火しそうな
感じがこみあげてくる。
こんなとき、笑うのを
止めたいと思うけれど、
なかなか抑えるのが難しい。
*
だけど、一方で、
カメラを向けられたとき、
「はい、わらってー」と言われると、
まったく笑えない。
笑えない気持ちの時に
笑顔を作ろうとすると、
不自然になる。
これって、
なんでだろうと思っていたが、
その秘密は「脳のなかの幽霊」の
中に書いてあった。
*
ものすごく簡単にいえば
「笑おう」という意志は、
脳の運動中枢によって実現される。
だけど、つい笑っちゃうときの
自然な笑顔は、
大脳基底核によって作られる。
要するに、作られる場所がちがう。
天然の笑顔は「基底核」で、
「運動中枢」は、笑顔の素人。
というわけなのだそうな。
*
(以下引用)
「ほほえみ」は簡単そうに見えるが
実は何十もの小さな筋肉がこまかな
協調をしている。
(自然なほほえみを生み出すことに
特化していない)運動中枢にしてみれば
一度も練習してことがない
ラフマニノフを演奏することに
匹敵するほど複雑な芸当なので、
無残な失敗をする。」
*
と、いうわけである。
カメラを向けられて、
自然な笑顔を作れないあなた…、
大丈夫です。
それは、あなたのせいじゃありません。
「はい、わらってー」という人に
言ってやりましょう。
それは、わざわざ
ぼくの「運動中枢」の代理人である
「言語中枢」に言うんじゃなくて、
直接「大脳基底核」に
伝えてくれと。
もっと簡単に言いかえるなら、
「はい、わらって」と言われたら、
「はい、わらわせて」と言い返して
やりましょう。
2019/07/06