だからなんなのだ問題
町の看板を見ていると、ふと思うことがある。
車の修理屋さんではこんなものを見つけた。
「タイヤだいわみなくる」
これ、一瞬こうみえた。
「タイヤたるみなくなる」
…だからなんなのだ。
*
小学生の通学路にある高架下に、
張り紙がたくさん貼ってある。
小学校の授業で描いた絵だ。
「ごみはすてたらだめ」
「地球を守ろう」
「きれいな町をあなたの手で」
というポスターたち。
その中のひとつの「ごみすてきんし」という
フレーズが目に入った。
あれ、「ごみすてきんし」のなかに
あらやだ、「ごみ(すてき)んし」…
すてき、がある。
…だからなんなのだ。
*
ごらんのとおり、言葉遊びの種っていうのは、
だからなんなのだ、という
どうともならん感じに満ちている。
しかし、佐藤雅彦「クリック」という本には
こんなのがある。
*
スポンジ
僕はスポンジ
僕はスポンジ
水をすったら 重くなる
しぼってしまえばもとどおり
僕はスポンジ
僕はスポンジ
せっけんすったら 泡がでる
しぼってしまえばもとどおり
*
これって、だからなんなんだ、って
思わない。
かわいい!と思う。
なぜなら、表現の向こう側に、
「きみ」がいる、と思えるから。
「ネタ」ではなくて、「きみ」が
いるかんじ。どういえばいいかな。
ぼくのとなりに、なんの脈絡もない
めがねがある。
…だからなんなのだ。
しかし、何の脈絡もなくとも
となりにいるのが猫であれば、
「にゃんにゃん、おいでおいで」
と言いたくなる。
(まったく関係ないけど、
車を運転しているとき、
目の前に鳩があらわれたので、慌てて、
とっさに出てきたことばが
「あ、ぽっぽ!」だった。
ちょっとショック。)
…
ネタがネタにならないためには、
どうしたらいいだろう。
2016/06/19