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さくらんぼのさとうづけ

岩波少年文庫の
「まぼろしの白馬」
(エリザベス・グージ著
石井桃子訳)
を読んでいます。
 

 
イギリスのロンドンに住んでいた
お金持ちの子のマリアが、
みなしごとなって田舎町へ
引っ越さなければならない、という
ところから話は始まります。
 
古くて暗い屋敷に住むことになり、
そこで料理番やお手伝いをしている
奇妙な人々や、動物たちと出会う。
 
マリアはその一族の子孫であることが
明るみにでて、彼らとも次第に打ち解け、
暗雲たる村を一変させる…という話。
 

 
読んでいて気持ちがいいのは、
「もし、こうだったら素敵だな」
というささいな望みが、
本の中でことごとく実現している、
というところ。
 
たとえば、朝起きたとき、
また、帰ってきたとき、
部屋には必ず暖炉の火が灯っていて、
水さしには湯がはってある。
衣装びつの上にも着替えがあり
そばでは白い猫か、
大きな犬がすやすや眠っている。
 
誰が世話をしてくれているのか
分からないけれど、
スノードロップの花が
飾ってあったり、
馬車に乗って出掛ける日には
紺色の乗馬服がていねいに畳んで
おいてある。
 
料理だって、最高においしそう。
熱いオニオン・スープ、
肉のシチューに焼きりんご、
自家製の皮のかたいパン、
あたためられたぶどう酒
マリーゴールド色のバターに
焼きたてのクリ。
 
デザートもいい。
ピンクのさとうごろものかかった
かわいらしいケーキ、
あわだっているしぼりたての牛乳、
銀のおさらいっぱいのサクランボの
さとうづけ。。
 

 
生活の衣食住が、なんとも美しく
したてあげられている。
誰か妖精みたいな人が、マリアの
知らない間に用意していてくれる。
(その正体は本を読むと分かります。)
 
ぼくは家に帰って部屋に戻ると
蒸し暑く、脱いだ洋服がだしっぱなし、
散乱した本、紙類その他があふれていて
うんざりする。
 
だからその分だけ、
本の中でこころよさを味わいたくなる。
 

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