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こぶ茶の味

京都はとても暑い、と
聞いていたので覚悟はしていたけど、
やっぱり暑い。
 
外に出るだけで
肌が焦げてしまいそうになる。
坂道など歩いていると、
すぐのどが乾いて、
冷たいもの、冷たいもの、
と飢えながら、よろよろしてしまう。
 

 
木陰で休んでいると、
向かいの茶店のおばちゃんが
おぼんを持ってやってきた。
 
ぼくにお茶をくれるという。
親切というよりも、
営業な口ぶりだったけれど
たいへんありがたく頂戴した。
 
聞くところ、それは「こぶ茶」で
あるらしかったけれど、
麦茶かなにかだと早合点して、
お礼をいうと、
ごっくん、と一気に口に
ふくんでしまった。
そしてびっくり。
 
うお熱い。
しかも塩からい。
 
べーってしそうになったけど、
我慢して、目を閉じる。
吐いてはいけない、という危機感が
思わぬ思考に機転
をきかせた。
 
「ちがう、ちがう、
これはスープ。
これはスープなんだ。」
こう言い聞かせた。
 
すると、さらりとのどを通った。
そのうえ薄味でけっこういけるではないか。
 
これにはおどろいた。
おなじものを飲んでいるのに、
味がまったく変わって感じる。
 
飲むときって、
「これは○○である」という
事前の認識っていうのが
とても大事なことなんだなと思った。
 
そぐっていれば、
すんなり受け入れることができるし、
ちがっていると、
びっくりして吐き出しそうになる。
 
これは作品かなにかを
つくるときにも応用がききそうだな
などと考えました。
 

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