お別れをするとき…
靴下や下着は、愛用しているものから
古くなっていく。
かかとに穴があいたり、
下着のゴムがゆるゆるになったり。
ぼくは、それでもあまり
気にしない方なんだけど、
足裏の親指のつけ根(母指球)の
あたりが破けて、そこだけ
フローリングの冷たさを直で感じたり
手を放すと、はいていたパンツが
するするっと床に落ちたりすると、
さすがにこれはいかんと思って
新しいのを買う。
*
そこで問題なのが、
古い方をどうしようか、ということ。
捨てる?
どこに?
住んでいる地区によって違うらしいけど
リサイクルとして回収していれば
古着回収の日にまとめて出せばよくて、
リサイクル不可の地域では、
燃えるゴミにまとめるらしい。
ウチの地域は燃えるゴミ…。
古くなったとはいえ、靴下を
ティッシュや、生ごみを入れてる
ゴミ箱に一緒にするのに抵抗がある。
今まで愛用していればこそ。
半分自分の体の一部みたいなものを、
すこし臭い、ちょっと湿ったゴミと一緒に
蓋をして置き去りにするのが忍びない。
せめてもの…
という気持ちを込めて、
手を合わせる。
今まで本当にありがとうございました。
と、お祈りをする。
これは感謝もあるが、それよりも
ゴミ箱に衣類を入れる抵抗感を
和らげるためのおまじない
と、いってもいいかもしれない。
そうすることで、
自分自身の気持ちに整理をつけたい、
という。
*
いったん話は変わるが、
こないだ岡山に行ったとき、
空いた時間に大型書店に寄り道をして
「ことばのしっぽ」(中央公論新社)
という本をみつけた。
読売新聞でいまでも連載している
「こどもの詩」の50周年を記念して
出版された本。
3歳から中学くらいの子が書いた
(もしくは発言した)投稿を
「詩」として選者がえらび集めたもの。
「書かれたもの」は
おそらく詩という前提で書かれているので
おおよそ養殖っていう感じ。
対して、
「発言を書き留めたもの」は、
素直で、天然ものという感じ。
後者の方がぼくは好き。
その中から、一つ引用。
*
「おわかれしき」
タッタッタ
くつしたさん にゅうじょう
これからくつしたさんの
おわかれしきをはじめます
くつしたさんは あながあくまで
がんばってくれました
ありがとうございました
*
小学1年生の女の子。
親がどこまで形を整えたのか、
分からないけど、
多分、じっさいにこのお別れ式を
やっていたんじゃないか。
と思う。
この子は、「おわかれしき」をしたあと、
くつしたさんを、どこに
捨てたのだろう?
ゴミ箱?
リサイクル?
お母さんに捨ててもらった?
どんな気持ちだったんだろう?
明るい調子のように見えるけど、
やっぱり寂しいとか、申し訳ないみたいな
気持ちはあったんだろうか?
そこを勝手に、きっとこうだった、
と決めつけるのも軽薄だけど、
分かるなあと、ぼくは思った。
2020/10/13