いま作っているもの外伝
とある造本家の方から、
突如として不思議なものが
送られてきました。
あれは、ちょうど一年くらい前…
白い紙を幾えにも、
折り、綴じ、重ねて
つくられた製本。
広げると蛇腹みたいに広がるんですが、
ところどころに、
小さなページがつぎはぎされていて、
まるで、小さな本で
一つの本をより集めた、
本のタペストリーみたいなもの。
幅2センチくらいのページが
続いたかと思うと、
幅10センチのページを
z型に折り曲げているページがあり、
その向かい側には観音開きみたいな
ページが待ち構えている。
世の中にはしかけ絵本というものが
あるけれど、これはしかけすぎ絵本。
そんなイメージです。
*
養老天命反転地ってご存知ですか?
岐阜県にある公園なのですが、
起伏あり、地面やたてものが斜め、
岩場、さかさ、
普通じゃない感覚にさせられる場所。
(行ったことないけど…)
それが、本になった、みたいな。
*
その製本には手紙が添えてあって、
「ウォーリーを探せ的な、
絵探しみたいななにかができたら」
という提案があったので、
かねてより興味のあった
虫の世界を描くことにしました。
そこで図書館で虫の図鑑や、
虫の暮らし、すみかについて
書いてある本をしらべることに。
おもしろいのは、
虫って人間とは全然違う価値観で
生きているから…
人間のなんでもないもの、
汚いもの、が虫にとっては
大切な場所、貴重な食糧だったりする。
たとえば、
菜の花はアブラムシにとって
タワーマンションみたいなもの
なのかなあとか妄想したり。
倒木の下の泥まみれのところも、
みみずやヤスデには
居酒屋のような
社交場になっているのかも、とか。
*
というわけで、
あの複雑な製本を、
ひとつの森と見立てて、
幅の狭いページは、
茂みや、すきまに、
z型などの折りは、
曲がり角を周り込んで
裏側を見たような
表からは見えないけれど、
すきまや、うらがわに
虫たちの楽しそうな住処が
隠れている。
という
虫たちを探す小人の探検家の
視点になってみる
内容にしました。
*
その後、趣味のマッチのお城を
組み立てるがごとく
ちまちま毎朝ラフスケッチを描いて
ようやく完成しました。
それがこれです。
なにがなにやら分からないですが笑
裏面もあります。
これは果たしてどのような結末を
迎えることになるのか。
たのしみ。
2021/05/24