あれ、それ、これ
ドラマや映画をみて感動するのは、
大人の方が多い。
のではないかと思う。
たとえば、こんな映画の中で
「少年が先生と握手する」という
シーンがあったとして、
それを大人がみて、
おいおい泣いているとする。
3才くらいの子どもには
それが、なぜなのか分からない。
子どもの言い分
「手を繋いだだけじゃ、
なにも悲しくも、
面白くもない。」
大人の言い分
「不良少年を更生させた
先生は、実は行方不明になっていた
実の父親だった。そんな2人が
時を超えて握手しているなんて、
泣けてくるよ」
たとえ話だけど、子どもは、
目の前にある「あれ、それ、これ」と
指させるものが面白いかどうか、
という視点。
一方で大人は、
目の前で面白い現象が起きなくても、
その文脈や、説明的な部分に感動する。
…という仮説。。
*
未就学児に向けて、絵本や紙芝居を
作っていると、
ウケるものと、そうでないものの違いが、
次第に見えてくる。
大人なら、理解できるもの、
しかし、子供にはわかりにくいもの。
こういうものは、よく「説明的」という
言い方で批判される。
以下、その例の実体験。
「まほうのぎおんご」という
2コマ漫画を描いて
子どもたちに見せたことがあった。
「女の子に”すーっ”と魔法をとなえると
スケートで氷の上を滑りだす。」
だけど、そこは氷の崖のふち。
“ぴた!”という魔法をとなえると、
ぎりぎり止まった。」というもの。
大人の観点からすると
よく崖から落ちなかったなー!
危なかったねー!
という反応になるが、
大半の子どもには、ん?であった。
氷の崖でスケート=落ちる=ケガする
=あぶない!→でもぎりぎり止まれた
=おちなくてよかった。
という、連鎖的な思考が、
指させるもの、つまり
「あれ、それ、これ」ではない。
一方、こんなシーンも描いた。
“しーん”としている岩に
“ぴょん!”と、となえると
とつぜん岩が足を生やして
飛び上がる、という絵を描いた。
大人には、ありえない!シュール!
となるが、
子どもには意外にもウケる。
飛び上がった岩に生えた足をみて、
あれ!それ!これ!と指させる。
だから、分かる。
*
思えば、枕草子も、
「あれ、それ、これ」である。
春は朝陽がいい。
空と山際のきらきらがいい。
例外もあるけれど、
身の回りを見渡して
いいものを指さして見つけている。
大人になるにつれて、
感動や、想いや、考えは、
どことなく複雑で、
見えない関係性にある、と
思いがちになる。
もっとシンプルに、
目の前のものを面白がれたら
と、思う。
2018/01/11