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あれ、それ、これ

ドラマや映画をみて感動するのは、
大人の方が多い。
のではないかと思う。
 
たとえば、こんな映画の中で
「少年が先生と握手する」という
シーンがあったとして、
それを大人がみて、
おいおい泣いているとする。
 
3才くらいの子どもには
それが、なぜなのか分からない。
 
子どもの言い分
「手を繋いだだけじゃ、
なにも悲しくも、
面白くもない。」
 
大人の言い分
「不良少年を更生させた
先生は、実は行方不明になっていた
実の父親だった。そんな2人が
時を超えて握手しているなんて、
泣けてくるよ」
 
たとえ話だけど、子どもは、
目の前にある「あれ、それ、これ」と
指させるものが面白いかどうか、
という視点。
 
一方で大人は、
目の前で面白い現象が起きなくても、
その文脈や、説明的な部分に感動する。
…という仮説。。
 


 
未就学児に向けて、絵本や紙芝居を
作っていると、
ウケるものと、そうでないものの違いが、
次第に見えてくる。
 
大人なら、理解できるもの、
しかし、子供にはわかりにくいもの。
こういうものは、よく「説明的」という
言い方で批判される。
 
以下、その例の実体験。
 
「まほうのぎおんご」という
2コマ漫画を描いて
子どもたちに見せたことがあった。
「女の子に”すーっ”と魔法をとなえると
スケートで氷の上を滑りだす。」
 
だけど、そこは氷の崖のふち。
“ぴた!”という魔法をとなえると、
ぎりぎり止まった。」というもの。
 
大人の観点からすると
よく崖から落ちなかったなー!
危なかったねー!
という反応になるが、
大半の子どもには、ん?であった。
 
氷の崖でスケート=落ちる=ケガする
=あぶない!→でもぎりぎり止まれた
=おちなくてよかった。
という、連鎖的な思考が、
指させるもの、つまり
「あれ、それ、これ」ではない。
 
一方、こんなシーンも描いた。
“しーん”としている岩に
“ぴょん!”と、となえると
とつぜん岩が足を生やして
飛び上がる、という絵を描いた。
 
大人には、ありえない!シュール!
となるが、
子どもには意外にもウケる。
 
飛び上がった岩に生えた足をみて、
あれ!それ!これ!と指させる。
だから、分かる。
 

 
思えば、枕草子も、
「あれ、それ、これ」である。
春は朝陽がいい。
空と山際のきらきらがいい。
 
例外もあるけれど、
身の回りを見渡して
いいものを指さして見つけている。
 
大人になるにつれて、
感動や、想いや、考えは、
どことなく複雑で、
見えない関係性にある、と
思いがちになる。
 
もっとシンプルに、
目の前のものを面白がれたら
と、思う。

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