あなたのなまえ
「いい本の条件とは」というものが、
きっと、作り手であるその業界や、
読み手である各人に、それぞれの思いが
あるのだろうと思う。
ぼくがひとつ挙げるなら
丈夫な本、かなあ。
壊れにくいとか、汚れても
あまり気にならないとか。
専門的な人たちからすると、
もっと適切な意見がありそうだけれど
こればっかりは、たいがい
そうなんじゃないかと思う。
これは読んでいる側でも、
作る側に立っても両方思うけど、
長ーく置いておいてほしい
という気持ちが土台にあります。
「長ーく置いておいてほしい」という
気もちは、造本にだけ表れる、
ということでもないのです。
どういうことか。
その秘密を見つけたのは、
古絵本屋にあった
ハンス・フィッシャーという
スイス生まれの作家の
「ブレーメンのおんがくたい」の
絵本の中でした。
はじめのページを数枚めくると、
(彼の絵に特徴的な)ふにゃふにゃした
素敵な線画で、犬やにわとりやらが
装飾枠となって、
「あなたのなまえ」というのを書く
スペースがある。
(正確な記憶ではないけれど)
これって、幼児向けの絵本に
よく見るんだけど、
(たしか「ぐりとぐら」にも
あったような…?)
これを改めて見た時に、
おお!これだ!と思いました。
できるだけ長く、この絵本(わたし)を
そばに置いててください、
これからはあなたの本になります。
と言われたような気がして、
うれしい、はずかしい、
という気もちになりました。
これ、やりたいなあ。
いま作っている本で。
2013/07/15