「手の届かない」味
なにかを見た時、
誰かと会った時、
たまに、味を思い出すことがある。
あ、このおばさん、
ブルーチーズっぽいな。とか。
きみは、チンジャオロース。
とか。
古くなったすっぱいキムチみたい。
とか。
それは共感覚というらしくて、
感覚の交通整理が
ごちゃっとしたものらしい。
(よく知らないけど)
*
目でみたものを味で感じてみるって
面白いよなあ、と思う。
赤ちゃんが、まるで
手で触るように、
とりあえず口に入れてみる
というのも、
好奇心として、
たしかにな、味でも
感じてみたいよな。と
勝手に共感。
そこで、こんな妄想をしてみる。
目では見えるけど、
ぜったいに味見してみることが
できないものを、
あえて味で例えてみるっていうことが
なんとなーく、面白いなと。
*
●たとえば、月の光ってどんな味?
=早朝の葉に溜まる露に、
はちみつと、バニラを
たらしたような味。
みたいな。
●光は光でも、
ろうそくの光ってどんな味?
=ちょっとさびたような、
ほこりの味。
●オーロラの味は?
=苦い岩肌のような、
ざらざらした味。
舌の上でぱちりとはじけて、
びっくりさせる味。
●虹は?
=キャンディの味。
●入道雲の味は?
=バナナみたいな、
とってりとした甘さ、
それから、きれいな水のような
冷たさ。
●聖歌隊の歌声はどんな味?
=すこし刺激があって辛いけど、
口の中を泳がせているうちに
やさしくなる。
古い木造の家の匂いのある味。
●雷の味。
=とても口には入れてられない。
舌をやけどします。
薬品のようなすーんとした
後味がのこります。
●車のテールランプは?
=苦くてまずい。
消毒液の味。
●冬の空の星の味は?
=甘くて、口の中で
細かくふるえて響き、しゅわしゅわっと
クリームソーダ味になる。
…
そんなことを延々としているのが
たのしい。
こういう妄想って人と共有できるもの?
なんか、分かる!
って思えるものが、ひとつでも
あったらうれしいし。
そうじゃない意見も聞いてみたい。
2020/02/05