worksは8/24に更新しました.

魂が飛ぶ

自分が小さかった頃のビデオ映像を
見たりすると、
情けなくて恥ずかしいのだけど、
ちょっと面白いことがあります。
 
そのビデオ映像というのは
保育園の運動会の時のもの。
 
小さな園の庭に列になって並び、
流行りの音楽に合わせて
みんなで踊るんですが、
カメラの視点がゆっくりと後ろの方に
移動していくと、
最後尾に一人、しゃがんで砂遊びを
している子がしている。
 
それがぼくだというのです。
 
ホットドッグいかが122
 
みんな練習の成果をたどたどしくも
一生懸命に演じるのだけど、
なぜかその時、ぼくの気持ちは
全く別のとこにいて、違うことに
興味があったんだと思います。
 
小学校の頃も通知表には、
「人の話を良く聞くように」
と書かれていたし、
高校生の健康診断で、お医者さんの
「はい、息すってー」に
息を吸い忘れたこともあった。
 
要するに、心ここにあらず、という
状態に陥り易いのだと思ってました。
人生最大の欠点として。
 

 
友人にすすめられて、
多和田葉子「飛魂」をちょっとずつ
読んでいるのですが、興味深い。
 
かいつまむとこんなこと。
 
中国に亀鏡という虎使いがいた。
著名な女虎使いで、女たちは彼女のような
虎使いになるべく、
亀鏡の寺院に入門しようとする。
 
でも入門できるのはごく限られた者だけ。
その中で「わたし」である梨水は選ばれた。
 
「知識を蓄積することができず
思考がいつも十転して、行き着く先は
いつも矛盾であるわたしのような者が
それでも採用されたのは、
古代の人々が「飛魂」と呼んでいた
心の働きが偶然わたしの中で強かった
せいだろう。」
 
寺院に行くまでの道のりで
不安で怖くなっても、
通知の手紙をもらったときのことを
思い出せばおののきの呪縛もとける。
 
「記憶の中のひとつの状況に魂を
飛ばして、今そこに居るも同然」となること、
これが飛魂なんだって。
 
心ここにあらず、が
ひとつの才能として描かれている点に
希望が持てるような気がしました。

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