worksは8/24に更新しました.

関心の解剖

面白いなあ、という絵本をみつけた。
「面白いな」と思った時、
なぜ面白いと思ったのか
考えてみると、自分の関心が見えてくる。
 
見つけたのは2冊。
 
1冊目は「ぼくからみると
 

ひとりで池釣りをしているぼく。
でも、実はここにいるのは
ぼくだけじゃない。
 
同時に、
虫も、魚も、動物も、友達も
その場に一緒にいる。
一緒にいながらにして、
なんと、違ったものを見ている。
 
それぞれ何をおもいながら、
なにを見ているんだろう。
 
いろんな生き物の視点からみた
いろんな風景をきりとっているが、
それは、
「ぼく」の見ている世界が、
全部だと思わないほうがいい、と
 
いろんなものの中のうちの
たったのひとつなんだ、
ということを、
教えてくれる。
 
ユクスキュル/クリサート著の
生物からみた世界」を
思い出す。
それぞれの生き物に環世界があって、
まったく別の世界のとらえ方をしている。
それらを相対的にみないと
見えてこない感覚もある。
 

 
もう一冊。
もし…どっちのみちへいこうかな
 

表紙をめくると
最初に注意書きがある。
 
「今月号は、切ってから 読んでください」
いくつかのページに切り取り線が
ついていて、
それをカッターで工作をしてから、
楽しんでください。という。
 
この時点でものすごく
チャレンジングだと思ってわくわく。
 
選択肢のあるストーリーを
選んで読み進め、
(「もりからでる?こうえんにはいる?」
など…)
計8つのエンディングが
用意されている。
 
いまでこそゲームで
マルチエンディングが
よくある手法だけど、
30年も昔から、しかも
絵本でそれをやるとは…。
 
これを読んで遊んでいると、
要するに「ぼく」は、
未来を変えることができる、
という自覚がわいてくる。
 
ということは、その岐路に
いつでも自分が立っていて、
ぼーっとしていようが、
危機感を感じていようが、
常にみえない未来の選択を
迫られている。
 
量子力学の世界で
(くわしく知らないけど)
相互干渉多世界…
つまりパラレルワールドの
考えがあるが、
そういう科学者的な匂いを感じる。
 

 
2冊とも絵本の作り方や
着想がすばらしく面白い。
 
実は、どちらの本も
作者が、
高木仁三郎
という人。
 
核化学を専門とした物理学者だそうな。
原発事故が起きるずっとむかしから
原発反対運動をしていたらしい。
全然知らなかった。
 
科学的な観点からのアプローチに
強く伝えたい気持ちがにじみ出て来ている。
 
人生を人間主観だけで済ませてはいかん。
想像以上にしらない世界が
この世界には同時に存在していて、
それぞれが、対等に生きていくには、
いったいどうしたら、いいのか、
と問われているようだ。
 

 
絵本は、絵描きを含めて、
なにかを伝える媒体。
 
そこにどんな思想や、考えを
込めるのかは、
できるだけいろんなジャンルの
専門家が考えるのがいい。
 
いろんなタイプの本があっていいけど、
自分なら、そういう絵本が読みたい。
 
作るにしても、自分自身が
言葉の専門家として知識を深めて、
その不思議さを
子どもたちと共有したい。
 
専門で研究しているひとは
いっぱいいるけど、
その「共有」の部分を、
(超むずかしいけど)
自分の役割にしたい。

« »

サイト管理