worksは8/24に更新しました.

言葉のチャンネル

数人の友だちと話しているとき、
ふとした拍子に
「そりゃひとすじなわにはいかないね」
とぼくが言うと、
これまで滑らかに回っていた会話が
ぎしっと音をたてたようなムードになった。
 
友だちが一瞬きょとんとして
「ひ、と、す、じ、な、わ、?」
という目をする。
 
あ、ここれはまずいな、と
なぜだか思って、
慌てて何事もないように話を続ける。
 
「いや、ほら、こう
いっぺんとうになってもさ…」
こう言った途端、こんどははっきりと
感じられた。
場が0.1秒くらい氷つく。
「い、っ、ぺ、ん、と、う、?」
 
テレパシーのようなものが
ぞくっと伝わってくる。
「そのいいかたはあまり、
ふさわしくないぜ!?」
だれもそう言わないのに、そう分かる。
 
ロッテ209
 
本で読んだり、文章で書けば
違和感がないのに、
口に出して語りかけた途端に
ぎこちなくなってしまう単語がある。
 
会話というのは、なぜだか、
「共有」にことに敏感な場なのだ。
話しをしているお互いの共通項である、
擦切れた言葉が必要になる。
 

 
じつはここが面白いところでは、
と考えている。
 
文面で書けばそれで済むところを
口で語る場合には、その人との
語彙の周波数を合わせた方が
いいのだと思った。
 
その瞬間に、頭の中で
日本語と日本語の間で翻訳がなされる。
まったく変な話だけど、この翻訳こそが
会話の創造性であり、醍醐味なのだ!
 
と、言ってはみるものの、
そう簡単にはいかない。
 
頭の中では分かっているつもりでも、
口に出してみると
全然チャンネルが合わせられない、
なんていうことがほとんど。
 
会話の中で適正なチャンネルに
似合う言葉をみつけられるというのは、
ただ「考えをなぞる」だけではない
発見があるんだろうなあ…

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