色がない世界
以前から思っていたことなんだけど、
込み合ったバスに乗っているとき
前に背負ったリュックから、
パスケースを探す感覚が、面白い。
リュックにはたくさんものを
入れるクセがあるのと、
バスが込んでいるのとで、
ファスナーを広げて中をのぞいて
探すことができない。
なので、チャックをわずかに開けて
手をつっこんで目的の物を探す。
目で見ないで、手の感触だけなので、
おや、これはなんだろう?
と思う。
いま触れているものが何か推測する、
これは、スケジュール帳か
パスケースか。
ひも状のものが手に触る。
これは、充電コードか、イヤホンか。
だんだん、目的が変わってきて
手が自分の体全体だというように
想像して、
バッグの中にロープを下して
密林の崖をするすると
クライミングしていく…みたいな。
その様子を妄想するのが面白いので、
気が付いたら、降りるバス停に到着。
パスケースは見つからず、お客さんを
待たせてしまう。
*
その時は、リュックの中がジャングルや
密林のように感じて、
カラー映像を頭の中で浮かべていたが、
だが、そうではなかった。
*
こないだ、ペンケースから、
黄色いボールペンをとろうと思って
あの辺りにあるなと目視してから
手だけで探って、これだこれだと。
キャップを外そうとすると、
あろうことか、黒のマッキーだった。
「ありや?」
キツネにつままれたような気分。
ああそうか。
つまり、手の感触には色がないんじゃん。
自分のペンケースは、
化粧ポーチのように大きめで
いろんなペンが入っている。
なので、最初に目でこのペンだ、と
狙いを付けても、
目を逸らしてそのペンを取ろうと
すると、むずかしい。
絶対に、間違いなく、そのペンをとった
と思った上で、
確認して、違ったペンだと、
逆に快感だったりする。
おためしあれ。
2019/02/21