worksは8/24に更新しました.

絵本の演出効果

最近はもっぱら絵本を買ってしまう。
ちょっと前までは、一瞬で自分を
変えてくれる啓示的な本との出会いを
求めて、海外文庫や新書などを
主に見ていたけど、最近は絵本。
 
読んでいくと、構成のすごさが
見えてくる。
絵本はなんとなく描かれているようで、
実はとても緻密に構成されているのだ、
ということが分かってくる。
 
たとえば、『ねえさんといもうと』という
姉妹だけが出てくる絵本がある。
一般家庭にいる普通の女の子たち。
 
それも、何気ない日常を描いている
だけなんだけど、読むと、
ああいいなあ、と心にのこる。
 
さて、この「ああいいなあ」は
どこからやってくるのだろう。
 

 
それを確認するために、
ちょっと比較してみよう。
 
仮に、ある一日の様子がまとめられた
アルバムの写真を順に並べて、
セリフをつけたら絵本になるか、
といったら、なるとは限らない。
 
アルバムのような偶然によって起きた
幾つものの出来事というより、
絵本は「ある気持ちの感触」を伝える為に、
必然的な状況を(それも削ぎ落として)
セッティングする構造作りから始めて
いるのだと思った。
 
実際に子どものいる親からすれば
生まれた時から子どもたちの
文脈(性格や体験)を知っているから、
なんとはない一日にも、物語を
感じるかもしれない。
 
でも絵本のキャラクターは
絵本の中だけでしか生きられない。
 
どういう気持ちで、どんな性格をもった子が
どういう動機で、なにをするのか。
これを短い導入で、
自然に語らなければいけない。
 
さらに、彼らの行動が、
「ある気持ちの感触」を伝える為の
表現として着地しているかどうか、
ここを整えるのが実にむずかしい。
 
良い絵本ほど、なんだ簡単じゃないか、と
思わせる程すんなりと描かれている。
あたかも、ずーっと前からこういう子が
いるんだなあっていう気になる。
 

 
そんな視点で、ぼくが最近出会った
面白いと思った絵本はいくつか
読書感想文。
 
ねえさんといもうと』(福音館書店)
作ゾロトウ/絵アレキサンダー
 
子どもにも、いろんな子がいて、
いろんな兄弟や姉妹がいるけど、
ここに出てくる姉妹は、
もうほんとに模範的で素直でかわいい。
 
いま「模範的」っていうのは「個性の良さ」
に対して、あんまりよろしくない感じに
とられるかもしれないけど、
これを読んだ子は心がほぐされたように
「良い子になりたい」って思うだろうな。
 
小さい女の子って特に「お姉ちゃん」に
感化されやすいものだと思うし。
 
ジャイアント・ジャム・サンド』(アリス館)
作絵ジョン・ヴァーノン・ロード
 
これは衝撃的な絵本。
いきなり4百万匹の蜂が町に襲いかかる
ところから始まる。
 
その対応策として、巨大ジャムサンドを作り、
蜂をいっきにおびき寄せてつかまえよう、
というんだから、奇想天外にもほどがある。
 
でも、小麦粉からこねて、かまどで
焼くまでの行程がとってもよく
描写されていて、作り話だとは知りながらも、
のめり込んで眺めてしまう。
 
でき上がった巨大なジャムサンドに、
4百万匹の蜂が集まり、
待機していたヘリコプターから、
サンドするパンが落とされるシーンは
圧巻。こんなに楽しい絵本はなかなかない。
 

 
まだまだ紹介したいけど、またこんど。
 
整理すると、絵本においての演出の仕方に
今ぼくは関心を寄せている、ということでした。

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