worksは8/24に更新しました.

母音ってなんだっけ

前に、ことばの実験室で
「段音によるトーン」を実験した。
 
ひとつの母音だけで文をつくると、
どうなるか。
 
あ段「あざやかなあさ」
い段「りりしいひびき」
う段「くすぐるふうふ」
え段「めげてへべれけ」
お段「おとこのほのお」
 
言葉には、音が醸し出すイメージが
あるような気がして、
「あかさたなはまやらわ」
だけを使って文を作ったら、
「あ」の口で出す音、特有の感触が
出るのではとおもった。
 
しかし、実際は自分のイメージとは
すこし違った。
 
理由1
子音の音のバリエーションが目立って、
自然に母音に意識が向くかというと
そうでもないこと。
 
理由2
各段音に性格とかキャラクターが
ありそうだと思っていたが、
…たとえば、あ段は広がりがあって
明るいやつだとか。
でも、「やまんばは、はかばだ」とか
暗い意味の文にもなること。
 
「やまは、たかだか」
「あざやかな、はな」
など明るいイメージばかりではない。
思えば当然だけど。
 
*
 
じゃあ、あ段が「広がりがあって明るい」
と思わせている原因はなんだ、という事が
気になってくる。
 
岩波書店の「音とことばのふしぎな世界」
(川原繁人著)
を参照すると、面白い表が載っていた。
 
「あいうえお」を口の中の空間の広さ順で
並べているのだけど、
一番広いのは「あ」、その次は「お」
「え」ときて、「う」一番狭いのは「い」。
 
楽器をイメージすれば分かりやすいけど、
ラッパみたいな広がった口だと、 
(明るい)あ、の音に近い。
 
笛のような、細い口だと、
(ピリッとした)い、の音に近い。
 
サックスのような、くるっと
すぼまった口だと、
(やわらかい)う、の音に近い。
などなど。
 
自分たちがなんとなく持っている
母音のイメージって、どこにあるんだろう
というと、じつは口内の大きさにあった。
 
だから、擬音語なら、音のイメージと
表現のニュアンスが直結する。
そのまま音のイメージだから。
 
でも、ぼくはてっきり、意味の方でも
「あ段」なら明るいイメージ、
だと勘違いしていた。
もちろん音のイメージと意味の一致も
あるけど、
それは必ずしもそうならない。
そういうのが多い気がする、
というだけで。
 
○まとめ○
 
1
擬音語にとっては、
段音の統一は音のイメージの抽出になる。
 
2
けれど、意味にとっては、
段音の統一は制約になる。
 
考察結果
 
その制約が面白さになる気がする。
「あ段」だけの音をつかって
どんなイメージか確かめる、
のではなくて、
何を言うか、が問題になる。
 
たぶん、これ読んでる人には
伝わってないと思うが、
ぼくにとってはちょっとした発見。

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