心の浸透性
子供の頃の辛い思い出といえば、
外泊したときのこと。
修学旅行とか、林間学校とか、
夏の合宿とか。
家族から離れて数日を
過ごさなければならないことが
なによりも過酷。
思い出してみると、
お守りを首から下げていた、
という恥ずかしい記憶があった。
「これはホームシックに対する
免疫効果があるのだ」と
授かったので、ありがたく毎日
身に付けていたのでした。
でも、友人に知れると恥ずかしくて、
必ず服の下に隠しておいた。
*
他には、マンガや本を持っていった。
普段は本は読まなかったけど、
外泊先で夕方や就寝時間になると、
どうにも寂しまぎれが必要になって
読み始める。
何の本だったか、
マンガだったか覚えていないけど、
家から連れてきた唯一の
家族のように思えて、
読んでいると多少、
胸の苦しさが緩和された。
本には、そういう効果があるのだ、
と今になると思えてくる。
ずっと身に付けていたら
お守りになるようなものとか、
かならずカバンの中に
入れておく本とか、
そういう存在感って今でも
あるよなと思う。
いろんな人と関わっていると
だんだん気分が擦切れてきて、
そういう時に、今なら
ケストナーとか池澤夏樹を読むと
自分がちょうどよく思える
居心地の気圧で深呼吸したようになる。
そういう心の浸透性が
高いものを自分も作りたいなと
思います。
2013/06/22