worksは8/24に更新しました.

嫌われたくない産物

甘やかされてきてしまった、と思う。
 
昔っからそうなのだと思う。
高校生1年生の頃、
あれは雨の上がった日のこと。
 
陸上競技部だったぼくは、
砂場にかぶせられたカバーを
とりはずそうと「重し」を持ち上げて、
わきに放り投げた。
 
すると運悪く、その場所がちょうど
淀んだ水たまりだった。
びっちゃんと泥水がはね飛んで
ウォーミングアップ中のT先輩に
かかってしまう。
 
T先輩というのは部内でも皆が
恐れる女主将で、試合前になると、
いつも目が殺気立つというような人。
 
うわ、やっばい、と周りにいた友人も
青ざめていた。なにしろジャージの裾が
びしょびしょのどろどろだった。
 
突然の叫び声、
「うおーいっ、あんだこれー、
誰だよ、ばかっやろ」
と言ってゆっくり振り向く。
 
そして、放り投げたまま固まっている
ぼくを見つける。
 
「…あ」と一瞬の間。
 
「あ、にしくんか。きみなら許す」
と笑顔で行ってしまった。
 

 
張りつめていた緊張感が解けて、
「おい、よかったな」と友人たちも
胸を撫で下ろす。
 
しかし、そのときになぜか僕だけが
ムっとしていたのを覚えている。
どうして怒らないんだ。と。
 
このようにして、私の中の弱い心や
「少年のまま」という名の馬鹿さは
図らずも守られてきてしまった。
 
他人のせいだな、とは思っていない。
むしろ、人に嫌われたくない、という
自分の強烈な煩悩によって
そういう立場に自らがなってしまった。
のだと思う。
 
自分の意思よりも、まずは他人に
嫌われないように、好かれるように、
という思考が日頃から働いていたことに
気がついた。
 

 
作品を作るときなんかも、
メルヘンとかロマンチックとか
言われてしまうけれど、
そういうものを作っている横で
ものすごく低俗なことをしたり考えたり
している自分がいる。
 
じぶんの考えた構造がうまく機能して
多くの人に関心を持ってもらおうと、
必死に考えるけど、どこかで「けっ」と
思ってしまっている自分もいる。
 
そういう時に周りから褒めてもらえると
申し訳ない気持ちになります。
 

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