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もう一人のわたし

自分が二人いたら、と想像してみる。
 
一緒にどこへいくだろう。
何を話すだろう。
…こう具体的に考えると楽しい。
一人では考えつかないことも
なにか形になりそうな気がする。
 
「なんか良いな」と感じながら、
誰にもうまく伝えられない事がある。
そんな事も思い切って
意見を出し合えば
きっとなにかの発見になる。
 
なぜなら相手は同じ自分なのだから。
 
もう一人のわたし148
 
予定を立てる時、アイデアを練る時、
行き詰まった時、一人で困った時には、
もう一人を用意すればいい。
 
まずはきれいな部屋を想像する。
外の景色も深い森の澄んだものにして、
室内の間取りを都合の良いように決め、
コーヒーをいれて、
もう一人の自分を向き合わせる。
 
こうして相手(自分)に
悩みの子細を打ち明ける。
 

 
スタインベック短編集(新潮文庫)
「白いウズラ」にも
同じようなことをする人物が出てくる。
 
美しいメアリーという娘。
彼女は理想の庭、理想の家を
ずっと夢想していて、結婚してから
それを完璧に実現させる。
 
何よりも自分の庭を愛し、
熱狂的に大切にしていた。
 
ある夜、庭に鋏を忘れてきたので、
外へ出ると部屋の中が見えた。
 
さっきまで座っていた場所に
もう一人の自分がいることを
想像して、愉快な気持ちになる。
 
そしてこんな場面。
 
「もしわたしが二人の人間になれたら—
『今晩は、メアリー、庭へいらっしゃい』
『まあ、すばらしい庭ね』
『ええ、わたし、とても好きなの。
ことに、この時間はね。
ちょっとメアリー、静かにして。
小鳥たちをおびやかせちゃいけないわ』」
 
と、自らと会話をしながら
胸をいっぱいにする。
 
こういう密かな悦楽を見つける一方、
夫には理解してもらえずに苦しむ…
 

 
自分ほど同じ他人は他にいない。
だからこそ「自分」と二人でなら
具体的な感覚を形にして、
共有できるのでは、と思う。
 

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