まえがきあとがき
本を読むときに、
「まえがき」や「あとがき」があると
うれしい気持ちになります。
下手をすると、本編を読む前に
「あとがき」から読む場合もあったり。
*
詩人の荒川洋治の詩集も、
あとがきがおもしろい。
詩は難しいけど、あとがきは読める。
謝辞や時系列的な解説をのぞけば、
詩に関する文はたった4つだったりする。
短いけれど的確な箴言のように胸を打つ。
(荒川洋治はエッセイも面白い。)
短いまえがきといえば、
センダック&ジョスリンの絵本、
「こんなとき どうする?」があります。
「わかき しんし/しゅくじょのための
れいぎさほうの ほん/まいにちの
くらしのなかで/きっと やくに
たちますよ」
象に乗ったふたりのおすまし顔の
女の子と男の子が
お茶を飲んでいる絵が描かれている。
冗談のような、でも本気にしても
たのしそうなムードが伝わってきます。
……作品を作っているとき、
あるいは作り終わってから、
「あれはなんだろう」と
じぶん自身でも整理して考えないと
それ以降うまく事が運ばないということが
あります。
「自分のしてることって何だっけ?」
という素朴な疑問を充分に咀嚼して
腑に落とさないと、思わしくない。
そこで、他の人はどうしてるんだろう、
と思うとき、
まえがきや、あとがきが、
ものすごく頼りになる先生に
思えてくることがあるんです。
*
まえがきやあとがきの
スペシャリスト、といえば
ケストナーだな、と思う。
ケストナーのまえがきは長い。
それだけで一つの物語みたい。
それにものすごくおもしろい。
「点子ちゃんとアントン」では、
「まえがきは、なるべく手短に」という
題のまえがきがある。
これは、ふだんから自分のまえがきが
長いことを配慮しての題に違いない。
さらに一つの章の終わりごとに
あとがきが添えてある。
本を読んだあとに、何が残っただろう。
なんの考えも浮かばなかった、逃して
しまったという子も多いかもしれない。
そんな子にケストナーは優しい。
ちょっと心配性なくらい。
本を読むと言うことは、自分の考えを
育むことだ、という風にケストナー先生は
言っているように思います。
2013/10/29