worksは8/24に更新しました.

なんにもない、などない

「なんか面白いことを書けたらな」
と思っていると、
周りを見渡してみても
なかなか特別な出来事と
出会うことがないような気がしてくる。

埼玉に住んでいた時なんか、
入間川沿いを自転車で走りながら
晴天の空をみて、
「あーなんにもないなあ」

と思ったりする。

そんなとき、

風はなぜ吹くのか、
どこからやってくるのか

杉本憲彦著(べレ出版)

を読んだら
なんにもなかったはずの
上空にも、想像が及んでくる。

そもそも、空は空気に満ちていて、
その空気は暖かさによって
膨らんだり、しぼんだりして
それで風が起こる。

オゾン層のずっと上、
オーロラが起こるほどの上空には
太陽からの磁気の光線が射して
白く輝く夜光雲がちらちら光る。

「熱圏界面」と呼ばれる
人工衛星が回るくらいの上空には
時に温度が2000℃もあるんだって。
(とはいえ、真空に近い状態なので、
どのように暑さを感じるのかは謎)

もっというと、
熱を帯びる=赤外線発している
ということは、
ヘビや蚊になってみると、
ぼくら人間も夜光雲のように
「光って」見える。

冴えない感じのときでも、
実は光っている。
と思うと、ちょっと励まされたような
気分になれたり。

「塵よりよみがえり」
レイ・ブラッドベリ(河出文庫)

怪物一族の話。
魔女の女の子のセシ―は、
いつも棺の中で横たわっているんだけど
眠りながらにして、
心を自由に移動することができる。

それこそ、
秋風になり、
クローバーの吐息として
さわやかに飛び、
鳩に宿って空を翔け、
葉に宿って生き、
蛙や、澄んだ湧水に宿る。

毛むくじゃらの犬に、
宿れば駆け回り、
大声で吠えては、
遠い納屋の壁から
返ってくるこだまに耳を
かたむける。

たったいま、この瞬間でさえ、
こんなにも心を宿すものが「ある」。
満ちている。

この本について、ぼくは
ほとんどセシ―のくだりだけが
好きなんだけど、
瞬間ごとの、濃い息遣いが
ものすごく耳元で聞こえた、
という感じがしてドキドキする。

「夜、空をとぶ」
作ランダル・ジャレル 
絵センダック
長田弘訳(みすず書房)

これもセシーの話と似ていて、
デイヴィットという男の子が
寝ているときに、空を飛ぶ能力が
備わってしまうという話。

深夜の誰しもが寝ている、
その間にも、いろんな
生き物がうごめいているのを
見つける。

人間とは違った、動物ごとの生活や、
物語があるんだなーと思う。
そんなこと、普段考えもしないし、
無いと思っていたのだけど、
だからこそ、目の前に現れると
魅力的に見える。

どんな時間にも、どの場所にも
こんなにも、あるじゃないか。

「ない」と思い込んで
見ていなかったんだろう、と
反省するような気持ちで思う。

穴あきの「補集合の本」を改め
「くうきのほん」
みたいな名前で、つくりたい。
と妄想中。

科学の知識を「分からせる」というより、
「ある」という事実を、
心地よく肯定的に
「感じさせる」ものを作れたらいいな。

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