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ども人の会話

以前紹介した「こどもバー」。
彼らが集うのは、店の中だけではない。
草むらにあるアリの巣も、彼らにとっては
重要な会議室である。
 
リクライニングソファにゆったりと
腰かけるように草の上に寝そべる。
 
片方が巣をほじくりかえすと、
わわわっと大混乱のアリたちが
湧いて出てきた。
 
それをぼんやり眺めながら
こんな会話が始まる。
 

 
「すごい、地面にはこんなに
たくさんのアリがいたのだ。」
「巣ってすごい。」
「うん、すごい。」
 
「…そういえば、せん週
春やすみをりようして
西海岸に行ったんだ。」
「ウエストコースト!ひこうきで?」
「むろん。カリフォルニアさ。」
 
蟻の巣で153
 
「なにを見た?」
「それがね、驚いたことに、そこは
アメリカ人の巣だったんだ。」
「巣!?」
「そうさ、どこを見ても
アメリカ人しかいない。」
「うそだろ?」
「テレビで見る世界中のアメリカ人も
みんな西海岸から湧いて出るんだ。」
「知らなかった。」
「よく考えてもみたまえ。
われわれ日本人も、
アメリカ人からみれば、
ここ日本が巣なわけだ。」
 
「…うーん、そうかな。」
「そうさ。」
「でも、ぼくらって、
日本人じゃないんだよ。」
 
「そのわけを教えてくれないか。」
「ほら、
“こいぬ”って、いぬだろう。
“こねこ”はねこだろう。
“ことり”はとりだろう。
いいかいつまりこういうことだ。
われわれ”こども”はね、
「ども」なんだ。」
 
「まさか…」
「そう、ぼくらは、ども人。」
「どど、ども人?」
 
「さっそくどもっているね。」
 

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