worksは8/24に更新しました.

いのちのかまど

三木成夫という人の本が面白いです。

以前「内臓とこころ」(河出書房新社)
という本を教えてもらって読んだのですが、
ものすごく端的にいうと、

心や、気持ちというのは、
自分の意識の産物だと思っていたけど、
実は、
お腹減った、とか、トイレ行きたい
みたいな
内臓的な働きの影響が、
気持ちとなって表れている。という。

谷川俊太郎さんが詩を書いた
「この気持ちはなんだろう」という歌が
あったけど、
それは、あなたの内臓の状態です、と
三木さんなら答えるはずです。

そして、内臓は、
動物的ではなく、植物的だと。
植物は、季節や朝夕の時間のリズムで
咲いたり、枯れたり、種を落としたり
を繰り返していますよね。

で、その季節や朝夕のリズムって
つまり「太陽と地球の動き」のことで。

大げさに聞こえるかもしれませんが、
これはそのままの意味で、
太陽系(もっというと宇宙)の動きと
一緒のリズムで生きている、
ということなんです。

それは、植物だけではなくて、
人間の内臓も同じ。

内臓(または気持ち)は
ぼくやあなたの意志ではなく、
宇宙のリズムで動いている。

「ぼく」という自分がここにいる
と思いながらも、
一方で、自分の体の箱の中には、
太陽系(宇宙)の流れで波うつ
「ぼく」とは別の、
神秘的な天体が光っている
ということなんです。

宇宙とか、神秘とか、だんだん
スピリチュアルなワードが出てくるから
科学とは遠いように感じますが、
解剖学者というか脳生理学者であり
養老孟司さんの先輩にあたる人が
そう言っているので、
本当にそうなんだっていう気がしている。

ここからが本題で、その三木さんが
海・呼吸・古代形象」(うぶすな書院)
の中で、
呼吸について書いているとこが
これまたハッとさせられたんです。

“「動物」の呼吸は
「植物」のそれとくらべて、
およそ比較にならぬくらい旺盛なもの
であるという。
すなわち、
獲物をもとめて動かぬかぎり
自らの生命を維持することの
できない動物たちにとって、
この推進器(感覚ー神経ー運動の
いわゆる動物性器官)を働かせる、
いわば「ガソリンの燃焼」は
どうしても必要となってくる…”

…読んでいて、まるで自分の体に
蒸気機関車のかまどが
あるかのように思えてきます。

さらにこれは寝ている間も
行われているので、
休むことなく、ずっとうちわを
手であおぎ続けるように燃やし、
動くエネルギーにし、
その分、けむり(炭酸ガス)を追い出す。

”つまり自分の「いのちのかまど」に
しっかりと息をさせてやらねば
ならないのである。”

ぼくがなぜ、ことばが好きか、
というと、
こういう短いフレーズだけで、
ぱっと目の前のイメージが変わって
人生そのものがきらきら見えてくる、
からなんです。

人がなぜ呼吸をするかって、
それは、体の中のいのちのかまどを
絶やさず燃やしているから
なんですね。

なんか、鬼滅の刃に出て来そうな
ファンタジー感が半端ない。

でも、これが本当なんです。
ファンタジーが実際に目の前に
起きている。
と思わせてくれるから、
科学の話は好きです。

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