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触感の転換術

体験談1
 
一日、外を歩き回って、家に着いたときは
深夜。
一息ついて、ついベッドに横になる。
 
すると、昨日干したばかりの
きれいなシーツが、なんとも、ちょうどよく
ひんやりしているではないか。
 
うーん、と足を伸ばして、
一日中締め付けていた靴下をぬぐと、
すべすべしたはだしがうれしくて、
まるで大きな水槽に戻された、元気な金魚みたいに
シーツの間を、すいすい泳ぎだす。
 
すごく楽しい。
 

 
体験談2
 
電車の中で、ぎゅうぎゅうに詰め込まれた
リュックの中から財布を取り出そうと
しているときが、そうである。
 
ぼくは、荷物もちであるので、
無用なものをたくさん持っている。
 
読みたいけど、結局読まない本数冊、
ハンドタオル、ペン入れ、ノート、
スケジュール帳、資料のファイル、
メモブロック、お茶、
イヤホン(絡まっている)、
充電器(絡まっている)、
ハンドタオル(2枚目)
これだけ入っていると、
パンパンになって、チャックも壊れそう。
 
目的地である財布は
忘れないように最初に入れるので、
つまり奥底に沈んでいる。
 
電車は込み合っているので、リュックを
前に背負って、そろそろと手を
暗闇にダイブさせる。
 
タオルを下り、ノートのリングを
すべっていくと
なにか硬い地面にぶち当たる。
…お、これは、底にしてはまだ浅いぞ。
いや、これはあれだ、本の小口というか、
天の部分だ。それとも、メモブロックか?
 
そのよこに沿わせていくと、なにかが
絡みつく、ややこしい草のつるだが、
いや、これはイヤホンコードだ。
 
そこを潜り抜けると、何かにチクりと刺された。
やばい、蜂の魔物が潜んでいた!
と思ったらボールペンだ。
一本だけ転がっていた。
しかもペン先が出ている。
だれだ、こんなことやったやつは…。
 

 
無事、底にある財布が取れたかどうかは
別として、
こういうことが
たまに面白いと思うことがある。
 
このふたつの体験談の共通項は、
目で見ているんじゃない感覚を
想像で補完している様を楽しむこと。
 
触感だけの世界というのは、
割合日常によくある。
靴の履き心地、
電車の暖房がふくらはぎに集中するとき、
髪を洗うときの感覚、
バスのゆれとか。
 
目をつむっていても成り立つ状況。
そういうときに
なんかうまく言えないけれど、
別の状況に転換して想像することが
よくある。

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