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ことばの実験室 更新2019/4/23

積極的な迷子

大人の遊び、というとどんなことを
思い浮かべるんだろう?

大人のみなさんは「遊びに行く」
というと、どこへいくんだろう。

旅行か、買い物か、遊園地か、
パーティ的な何か…わからない。

お前はなにをして遊んでいるのだ、
と聞かれることもあって、
なかなか人には言えないが、
この作文でなら、書けそうなので、
書いてみよう。

ときどきやってみることなんだけど、
「いつもの道」とは逆の方に行くこと。

逆の方に行く、とは言っても、
頭の中では俯瞰図みたいなものを
イメージしていて、
大体このあたりに来たんだよなあ、と
思いながら、ちゃんと目的地に
たどり着くようには調整する。

つまり、今まで通ったことがない
道を探す。自分から迷子に
なってみる。これが、ぼくの遊び。

自分の悪い癖は、
頻繁に通るところだと、ついつい、
「ここをどこだか知っている」
という気分になってしまう。

でも、いつも右に曲がるT字を
左に行ってみると、
がーん、と思う事がある。

なんだここは。
コンクリートが終わって、
そこからは土の道。
左右は雑木林で、深い緑が
かすかに光っている。
たちどまると森閑としていて、
頭がぽーっとする。

こんな道があったんだ!
知らなかった!とうれしくなる。

別に自然がたくさんあるからいい
というわけではなくて、
すぐ隣の通りなのに、
この景色初めてみた!という感動がいい。

工場地帯の脇に、
並木のある大きな通りがあって
住宅がずらーとならぶ。

夕方で、全く車も人もいないせいで、
無駄に広く思える通りに、木々が風で
そーっと揺れる。
これで頭がぽーっとする。

1軒だけ西洋の植物が
盛大に咲いた家があって、そこから、
知らないおばあさんがふっと
でてきた。
「用意ができましたよ」
と言われたから、思わず歩をとめて、
気がついたら、お茶にお呼ばれして、
人生相談のひとつでも聞いてもらう。

奇妙なくらいすべてに肯定的。

「よく初対面の人に、
そんなこと言えますね。」
と聞くと、

「それはあたしがもう死んでるから」
とひっひっひと魔女みたいに笑う。

…そんな怖い妄想をついしてしまう。

知らない道と出会う時、
風景をあじわう、という感じがする。

時間がゆっくりになって、
あめだまを舌で転がすように、
とろとろと味わう。

これって、なにに似てるかというと、
読書だな。
本を読んでいるときも、
時間が止まったような、
ほっとしたような気分になる。

じっくり文字を眺めて、
その景色をあじわう。

読書と、散歩はだから、似ているな。
読書好きのみなさんには、
迷子もおすすめしたい。

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