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本の中の野外

別世界にきたようだ、
という幸福な感覚は
旅行なんかで味わえることがある。
 
たとえば山に登ると
霞んだ山並みが遠くに見えたり
高い樹木がおおいかぶさったり
冷え冷えとした風が流れる。
草原に野花がほわほわ咲き乱れるし
ヒメジョオンに蜂が何匹もとまっている。
耳のそばでぶーんと過ぎる、
とつぜんがさっと茂みがゆれる。
 
びっくりする、とか、おそろしいとか
うつくしいとか、きもちいいとか
そういう刺激が具体的なモノとして
広がっている。
 
ああ、来て良かったなと思う。
場所の良さは、そこに
いつもは見ない風物があること。
 
つつじの子201
 
こういう特別な居場所感覚を
本の中でもみつける。
 
「グレイ・ラビットのおはなし」
(岩波少年文庫/石井桃子、中川季枝子訳)
です。
これは、
「クマのプーさん」などの翻訳や
「ノンちゃん雲に乗る」の
作者である石井桃子と、
「いやいやえん」
「ぐりとぐら」の作者の中川季枝子という
ものすごいタッグの翻訳だから、
それだけでも読む価値がありそうな本。
 
話はもちろんのこと、
出てくることばの形が心地いい。
 
「あまい草をかじりました」
「トチの木のねばねばした冬芽」
「あたためたプリムローズ酒」
 
ただ一部を書き抜いただけでは
効果はないのかもしれませんが
こんなふうに快いのです。
 
物語はことばを通して意味を
読み取るものだから、
ふだんはことばの形をあまり意識しない。
 
けれど心地よい字面というのは、
それだけで、じかに体験した刺激のような
感覚がある。
 
旅行などに出かけて感じる
幸福な気分と、読書の気分が
なんとなく似ている。
 
この感じをずいぶんと参考にしたい。

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