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感情移入の世界

白い、乳白色のおはじきを、
湯舟まで持っていった。
 
これは小学校のころのはなし。
 
このガラスのおはじきは
ときに車にも
飛行機にもなった。
 
今日はこれにクリーンな
ジェットエンジンを装備させて
湯面のぎりぎりを飛ばし、
半分閉じてあるお風呂のふたの
洞窟に探索をする。
 

 
もちろん潜水機能もついている。
じぶんもゴーグルをつけて潜る。
 
薄暗がりのなかに、ゆらゆらと
灯が乱反射している。
奇妙でうつくしい、と思う。
 
栓をつないでいるチェーンに沿って
水底まで降りていく。
ゆっくりと湯の底を
潜水艇「おはじき」は進んでいく。
 
洗ったばかりの浴槽は、
すべらかに磨かれていたので
息を止めたまま、うっとりする。
 
苦しくなると急上昇。
ひと呼吸。
また潜ろうとした時、ぽちゃんと
おはじきを落としてしまった。
 
はっとして、
湯のなかを見つめる。
しかし、どこへ転がったか分からず、
見つからない。
 
おろおろしながら、
「くるしーくるしー」と
思った記憶がある。
 
「くるしー」のは自分のことではなく
おはじきのことである。
 
早くしないとおはじきが
くるしくなっちまう!と
感じたのです。
 
おはじきなんて息をする
生き物じゃないんだから、
ずっと潜ってたって平気なんだ、と
考えてみるけれど、やっぱり
くるしい。
 

 
こういう感覚って、なんだろう。
モノにありったけ感情移入しちゃう。
 
これはごっこあそびの基本的な
姿勢、というか本能ではないか。
 
絵本「ケニーのまど」を読むと、
ケニーという男の子は、ぬいぐるみや
オモチャの兵隊、飼い犬と、遊んだり、
言い争ったりなどする。
 
まさに感情移入だけで作り上げられた
世界の物語。
 
空想の物語などを、今の年になって
読むと他人事に思えてしまうけれど、
小学校のころの感覚を思い出してみると
なつかしいなあ、という気持ちが
しんしんと降ってくるようです。
 

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