ことばの実験室 更新2019/7/15

帰ってきたら話すね

聞いたことがあるけど、
タイトルの知らない歌って
けっこうある。

aikoの歌は全体的にそれ。
どこで聞いてたのか、
誰の影響で聞いていたのか、
記憶はないのに、なぜかよく知ってる。

忘れていた頃に聞く名曲は、
改めて聞くと、
余計に名曲化する。

さて、だれにでも、
人に見せたら恥ずかしいノートや、
メモ帳があるはず。

SNSやブログでも
後々、黒歴史になりがちな
内容というものの中に、
好きな歌詞をとにかくたくさん
引用する、というのがある。

一度はやったことがあるでしょ?

ぼくは、今からそれをやります。
あしからず。

閑話休題。
みなさん、aikoの「キラキラ」という
タイトルを聞いて、どんな曲か、
思い浮かぶでしょうか?

ぼくは思い浮かばなかった。
ただ、タイトルがださいなと
思ったんだけど、
聞いてみたら知っている歌で、
歌詞がとてもよかった。

特にこの部分。

♪羽が生えたことも
深爪した事も
シルバーリングが黒くなった事
帰ってきたら話すね

の「帰ってきたら話すね」
というところにぞくっとした。

(歌のタイトルは
「帰ってきたら話すね」に
すればよかったのになと思う。)

ぞくっとしたのは、なんでだろう、
と考えてみると、
自分でも似たことを思った
体験があるからだった。

時代は小学校の頃にさかのぼる。

最強の内弁慶であり、
おうちが好きだった自分は、
外泊が大の苦手だった。

林間学校、スキー合宿、
夏キャンプ、修学旅行、
年に数回のイベントが
地獄だった。

よく「行く前は嫌だけど、
行ってしまえば楽しかった」
というけど、
ぼくは行く前から、家に帰るまで
ずっと地獄だった。

なにしろ家から、車や電車で
数時間の場所で何日かを過ごすのだ。
どうやったって自力では
家に帰れない。
逃げ場も、頼る人もおらず、
悲しくて、苦しくて、
いつでも泣きそう。

浮かれた友達に、肩をぽーんと
叩かれて、そのはずみで泣く。

きりきりと胃痛がして、
これはきっと盲腸で、手術しなければ
いけないやつだ、と妄想して泣く。

誰になにもされずとも、
知らない土地の空を見上げて、
その知らなさに怖くなって泣く。

吐けば少しはすっきりする
二日酔いと同じように、
泣けば少しは気が晴れる。

だから、なにかにつけて、
泣くタイミングを探していた。

―その時は、スキー合宿の時か。
ハの字でゆっくり斜面を
すべって、先にいってしまった
みんなの背を追っていた。

最後尾のおばちゃん先生が
ペースに合わせてついてきて
くれている。

リフトのピンポンという音が
遠くに聞こえて、
そちらに向かうと、
スピーカーから「明日があるさ」が
ながれてきた。

「あ、この歌知ってる。」
と思う。目を閉じると、
家で聞いた風景を思い出せるが、
目を開けると、
知らない景色がまぶしく重なる。

スキー場で知ってる歌が
流れたなんて、大した話題でもないのに
家に帰ったら、このことを
きっと家族に話すからね。

と思って、うっと、こみあげた。


aiko「キラキラ」を聞くと
そんなことを思い出して、
ついつい、胸がときめく。

当然ながら、今は外泊
全然好きなんだけどね。

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