ことばの実験室 更新2019/7/15

堀田善衛と宮崎駿

堀田善衛という名前だけは
聞いたことがあるけど、
本を読んだことがない。

そこで、「堀田善衛を読む
世界を知りぬくための羅針盤

(集英社新書)
という初心者にはちょうど
良さそうな本があったので、
読んでみた。

堀田善衛は、1918年生まれ、
戦争があった時代を過ごしている。

鴨長明の「方丈記」が
堀田善衛の愛読書であったようだけど、
方丈記がかかれた1180年~の時代にも、
戦争、竜巻、火災、地震飢饉、など、
いろんな災害に見舞われた時代だった
らしい。

…かつて大変な時代があった、
と言われるし、
現在の時代も同じようなもの、
とも言われる。

ぼーっとしている僕なんかは、
その両方とも実感がわかない。

どのくらい自分と関係が
あるのか、
なかなか実感することって、
ない。

影響が自分にも及べば、
実感に至るんだろうけれど、
そうでなかったら、
悩みは自分の内側にしか
種をまかない。

分かりやすい例でいうと、
原発事故が起きて
「わたしにできることは何?」
とさかんに人々が考えていた頃、

ぼく自身が
「自分にはなにができるんだろう?」
とは、到底思えない。
感情としては「これは大変だ」
とは思っていても、
そこに自分が働きかけよう、
という意味が見いだせない。

目に見えない、安全な檻に
囲われて、
「君はここでぬくぬく
していればいいんです」
という状況なのかもしれない。

今がどういう時代なのか、
っていうのは、
知識として知っても無駄で、
なにか、自分の感覚に
触れないとしょうがないし、
感覚に触れて、「ハッと」思ったところで、
じゃあ、どうしたらいいんだろう。
と、途方に暮れそう。

この本の最後の方の章で
宮崎駿が、 堀田善衛の
「空の空なればこそ」という
エッセイについて書いていた。

『旧約聖書』の「伝導の書」の
中の一節を引き合いに
出しているのだけど、
ものすごく端折って引用します。

「自分の耐えられることは、
力を尽くしてこれをしなさい。
そして、この最後がいいのです。
なぜなら、おまえの行く黄泉の世界には
権謀や術策もないかわりに
知恵も知識もないのだから、
と締めくくっているのです。」

なんか、もっと偉い事を考えたり、
行動したり、
立派になれないものか、と
ぐずぐず悩んだりするけれど、
死んだら、そんなもの、
なんにもなくなるから、
大丈夫、

とにかく、今、
自分のできる範囲について
力を尽くせていますか?

と言われているみたい。
どことなく自己啓発っぽいんだけど、
でも、この言葉には、
すーっと胸に下っていく、
ほんのりした爽快感があった。

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