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六郎さーん

読んでいると、とりとめが
なくなってしまう本があります。
 
谷内六郎「旅の絵本」
その名の通り、絵と文章の本。
カラー版なので、
どのページも開く度にうれしい。
 
なによりも文章があざやか。
カラーだから、というわけでなく
ぱっと見の字面の印象が気持ち良い。
 
終電車186
 
殆どが短い旅の随筆なんですが
そのうちの一遍の出だしだけ
引用してみても彩りがあるんです。
 

 
「正月のにおい」
 
陽だまりになっている
お菓子(駄菓子屋)の小店の縁に
晴着を着た少女たちがむらがり、
黒ずんだ霜をもつ地面に
オレンジのみかんの皮が散らばり、
澄みきった空にタコはじっと
静止したように動きません。

 

 
語のひとつひとつが粒立って、
すがすがしい絵具のタッチのように
手触りのあって、語感の方にばかり
気が向いてしまい
内容を読まず仕舞いになる。
 
かといって内容を読むと、
語感を見逃してしまう気がして
勿体ないと思ってしまう。
 
読みたいけど、眺めたい。
こういう板挟みの中で、次第に
とりとめがつかめない本に
なってしまうようです。
 

 
谷内六郎は元来体が弱く病気がちで、
皆とスキーしに行くが、
ひとり旅館のテーブルに仕事をする。
白いケント紙をおき、
「この何も描かない白が美しい」
とか思うような人。
 
あてもなく、夜の電車に
乗っているうち
帰れそうもなくなり、降りた駅の
駅員に笑われてしまう人。
 
海で泳いでいると、
地元の漁師に「ハリガネが浮いている」
と笑われて、もうあの辺りで
泳ぐのはよそう、と思う人。
 
繊細な人だなと思う。
人一倍敏感であろう。
だから言葉の選び方も、密度の濃い
ものなんだろう。
と勝手に妄想してうっとりします。

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