ことばのロボットいろはちゃん 更新2020/8/5

似顔絵の心得

ぼくがまだ18歳だったころのこと。

美大の受験のために
日々予備校に通っていたんだけれど
なかなか上達しなかったんです。

まわりの人からすると、
なんで描けないの?
と思われていただろうし、
こちらとて、
なんで描けるの?と思っていたくらい
なにか脳の構造が違うんだろうな
と思ってました。

予備校では毎回課題があって、
描き終えると、生徒たちは
自分の絵を壁に立てかける。

それで、講師が、いいものは上段に、
まあまあのは中段、よくないのは下段と
3段によりわけて並べる。

ぼくは最初から謙虚に下段に
置いておくんだけど、並び変えられる
ことは、あまりなかったなあ。

今でも、形を合わせるのが苦手で、
リアルに描こうと思うと
必ずどこかで形がくるってしまう。

だったら、最初からデフォルメして
しまえ、と今なら思うけど。

(形じゃなくて、動きでとらえて
描くのは比較的得意だったので、
手のデッサンのように
「似てる似てない」があまり関係なく
しぐさや、柔らかさで押し通せるものは
当時からよく描けていた気がする。)

でも石膏デッサンは、
顔が似ないと一発でばれてしまう。
デフォルメなんて言語道断。
そして、白いものなのに、
白い紙に黒で描くという謎の感覚。
立体感ってなんだ!?まじでわかんない!
と冷や汗をかく日々。

悔しい思いをしていたので、誰よりも
居残りをして、じとじと描いていました。

すると、うす暗がりから、
講師のひとりが遠い目をしながら
近づいてきて「西村よ」と声をかけてきた。

「毎日居残りするのはすごいけど、
ま、描けばいいってもんでもないからさ」

と、そこはかとなく帰るように促す。
「じゃあ…どうしたらいいんだ?…」
という気持ちを背にその日は帰ったのだけど、
今になってみると、たしかに
具体的な策をとっていなかった、と思う。

いま、毎日似顔絵を描いているのですが、
続けるからには、昨日よりも今日を
いい絵にしたいと思っています。

ただ、ぼーぜんと描いているだけだと
やっぱり自分の殻をやぶることもなく
ぬるい温度の絵が溜まるだけ。

そこで、気が付いたことを
似顔絵の心得として書いてみました。

精神論とか、感覚の意識っていうのは、
なかなかとらえどころがないので、
できる限り具体的な策として。

以下。

その1
描く前に、モデルの写真に
どんな動き、どんな気持ちを
感じるかを把握する。

その2
どういう仕上がり(色やレイアウト)に
するかを明確にイメージしておく。
(事前にPhotoshopで
完成イメージを作ること)

その3
形を合わせるのが苦手なので、
手間と時間短縮のために補助線をひく。

その4
けれど第一印象が一番大切。
補助線や、写真は見すぎないこと。
あくまで自分の絵の中で整合性が
とれていることを優先に。
(写真を頼りにしすぎないこと。)

その5
絵を回転させよ。
(逆さにしたりすると、
違和感に気が付きやすいので)

その6
立ち上がれ。
(絵を離れてみると、印象のバランス
の崩れに気が付きやすいので)

その7
絵の中で不明瞭なところを見つけたら
まず、どうなっているか想像してから、
答え合わせのように写真を見ること。
(服の下に隠れている肩、首、腕など
分かりにくいところなど特に。)

その8
顔は似るよりもまず可愛くあれ。
(ふだん人を見る時の印象と
絵を描くモードで見る印象って違って、
絵を描くモードになると執拗に顔を
見てしまうので、通常の人が見ている印象
以上に顔のパーツを強調してしまう傾向が
あるのです。)

その9
雑念がおこったら、深呼吸。
(思い出したくない嫌な思い出が
時々やってくる。この絵を素敵にする
ために集中集中。)

継続は力なりとは言うけれど、
続けていれさえいれば達人になれる、
というわけではないですよね。

こういう心得を日々実践しながら、
自分の描きたい絵が、描ける絵が
もっとよくなりますように。

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