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うちのおばばさん

ここ数日間、ぼくの部屋に
おばあさんがいる。
 
化粧しているみたいだから
おばあさんだと思うけど、
でもちょっと髭が生えているから、
もしかしたら「おじさん」かもしれない。
 
彼女はストーブの上で
焦げたミルク色の粥を炊きながら、
ゆっくり編み物をしている。
 
なにを編んでいるのと聞くと
あんたんちの猫のセーターよ、という。
見ると首もとがクルリンとしていて、
エリマキトカゲみたいでかわいい。
4本足からしっぽまで編んでいるから、
全身セーターだな、と思う。すごいな。
 
おばばさん135
 
来年は幸いにも、作ったり発表したり
いわば「バッターボックス」に立てる
機会をいくつか頂けそうなのだけど、
その分、心配の種は尽きない。
空振りしやしないか。見逃しはしないか。
ぼくには親しい友人も味方も無勢なので
心配は心配のまま、
ますます膨れあがってしまう。
 
来年に向けての下ごしらえを
今からこつこつと始めるけれど、
心配が過ぎると手も止まる。
そんなときに、後ろからぼん、と肩を
叩かれる。
 
なにをしけた顔してるのよ、
あんたはね、大丈夫。といって肩をゆする。
ぼくはされるがままにゆさゆさしている。
 
実は、この人こそ祖母の姉である。
かつてはすぐれた歌人だったようで、
彼女の短歌(や俳句)の本も
読んだことがある。
難しいけど、中には好みのものもあった。
 
どういうわけか、
気がつくとうちに居座る時期があり、
しかもぼくの部屋に陣取る。
そして今日みたいにぼくが作業しているのを
うしろからじっと見守っている。
(のかどうかは分からない。)
 
「ロウソクが今にも消えそうな背中して、
なさけない!
あんたの周りに悪いニュースはなさそうに
見えるんだけどね。」と言いながら
強かに肩を揉む。
 
「あんた奇跡を信じる?」と突然言うので、
ぼくがうにゃむにゃ応えていると、
じゃあ、わたしを信じなさい、
と言って、粥の中をヘラでかき混ぜる。
中からはとろっとバナナが出て来た。
バナナライス粥だよ。
シナモン入り、信じられる?
これが最高にうまいのよ。
ねえあんた。
 
「あんた」って。ぼくのこと、
名前で呼んでくれたことないなあ。この人、
と思ってちょっと笑ってしまいました。

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